未成年者の意思表示と取消

未成年者が、法定代理人の同意を得ずに行なった行為は、取り消すことができる(民法5条)。
ただし、行為能力者であることを信じさせるために詐術を用いたときには、その行為を取り消すことができない(民法21条)。

準禁治産者についてであるが詐術に関する最高裁判例がある。「民法二〇条にいう「詐術ヲ用ヰタルトキ」とは、無能力者が能力者であることを誤信させるために、相手方に対し積極的術策を用いた場合にかぎるものではなく、無能力者が、ふつうに人を欺くに足りる言動を用いて相手方の誤信を誘起し、または誤信を強めた場合をも包含すると解すべきである。したがつて、無能力者であることを黙秘していた場合でも、それが、無能力者の他の言動などと相俟つて、相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときは、なお詐術に当たるというべきであるが、単に無能力者であることを黙秘していたことの一事をもつて、右にいう詐術に当たるとするのは相当ではない。これを本件についてみるに、原判示によれば、Bは、所論のように、その所有にかかる農地に抵当権を設定して金員を借り受け、ついで、利息を支払わなかつたところから、本件土地の売買をするにいたつたのであり、同人は、その間終始自己が準禁治産者であることを黙秘していたというのであるが、原審の認定した右売買にいたるまでの経緯に照らせば、右黙秘の事実は、詐術に当たらないというべきである。それ故、Bが、本件売買契約に当たり、自己が能力者であることを信ぜしめるため詐術を用いたものと認めることはできないとした原審の認定判断は、相当として是認できる。」(最判昭和44年2月13日民集22-2-291)。当該事案は、準禁治産者自身が行為能力者であるかのように振る舞っていた経緯があるが、結論としては、それでも詐術には該当しないと判断していることに留意が必要である。

取引の安全よりも行為制限能力者の保護の必要性が高い場面であり、安易に詐術に該当すると判断することは慎むべきであろう。

2016年07月01日