フランチャイズ加盟は何のため/誰のため

独立起業の手段として、フランチャイズ加盟を選択する方は多いのですが、我が国においてフランチャイズ加盟することについて当職には根本的な疑問があります。

それは「いつまで経っても自分のビジネスにはならない」ということと「出口がない」ということです。

フランチャイズ契約は期限のある契約です。5年とか、コンビニだと10年や15年間と定められています。フランチャイズ本部は「元気なうちはいつまででも働けます」などと勧誘します。加盟希望者も契約書を斜め読みして契約が自動更新されるように思っています。しかし契約書を良く読むとそうではないことが分かります。「甲ないし乙から事前に書面による意思表示がない限り、〇年間の自動更新とする」と記載されていませんか。この条項の読み方は「加盟者に自動更新権はなく、本部が拒否したら、契約は更新されずに終わってしまう」と理解するのが正しいことになります。仮に、ようやく軌道に乗ってこれからだと思っていのに、本部から「更新しません。契約は終了です。」といわれてしまう恐ろしい条項なのです。

それでは「商売にはある程度慣れたので、1人で独立して続けるか。」と考えるかもしれません。これも契約書をよく読みましょう。「競業禁止」条項があるはずです。加盟者に対して、契約終了後、2年とか3年、同種の商売をすることを本部が禁止する条項です。加えて、それに反した場合の違約金の定めがあるかと思います。ロイヤルティ30か月分とか1000万円とか個人では支払えないような途方もない金額が定められています。これもまた実に恐ろしい条項です。

「店舗を第三者に売却する」とか「親族に相続させる」ことを考えましたか。これも契約上おそらく禁止されています。加盟者の死亡は契約解除事由ですので相続もできません。また、第三者への売却をさせないよう、店舗はおそらくわざわざ転貸借契約としていると思います。

海外では、フランチャイジーであっても店舗を繁盛させ、その価値を高めてから第三者に売却することは認められています。しかし我が国にはフランチャイズを適切に規制する法律がないため、契約書で禁止されてしまっているのです。フランチャイズを一種の投資として考えてください。不動産投資であれば、程度の良い新築や築浅のマンションを購入し、一定期間は賃料収入を得て、マンションの市況の良い時期にこれを第三者に売却して投下資金を回収することができるでしょう(なお、不動産投資を勧める趣旨ではありません)。

フランチャイズ加盟による事業は基本的に不動産売却のような「出口」がありません。一気に投下資本を回収する手段がなく、ただ終わってしまうのです。

これがフランチャイズではない、自分自身で始めた事業ならどうでしょうか。店舗を繁盛させて、辞めたくなったら第三者に売却することも可能でしょう。店舗数を増やして法人化し、いずれ親族に相続させることも考えられますし、さらに事業が大きくなれば上場するという方法もあり得るでしょう。しかしフランチャイズ加盟では基本的にはできません。
フランチャイズ加盟とは、投下資本を回収する手段は毎月の利益のみであり、最後は所有権が無くなってしまう(美味しくないし、楽しくもない)不動産投資のようなものです。

フランチャイズ本部からすると、加盟者が入れば、加盟金を徴収でき、毎月のロイヤルティを徴収でき、辞める時も場合によっては違約金を請求できます。年に数十件も元加盟者に違約金を請求して提訴するフランチャイズ本部すらあります。我が国のフランチャイズは本部のためにあるのであって、到底、共存共栄とかウイン-ウインの関係にあるとはいえません。

会社員の方が、自分が現在貰っている給料と、フランチャイズ本部が提示する毎月の予想収益とを比較したくなる気持ちは分かります。本部が提示している数字はおそらくは月の営業利益が70万から80万円前後、ちょっと頑張れば年収1000万円を達成できそうな、魅力のある数値を提示されていませんか(そうした数字にほとんど根拠がなく、紛争となるケースも多いです)。

しかし、フランチャイズ加盟を「投資」として考えた時、そこには大きな欠陥がある、と言わざるをえません。「ローリスク・ミドルリターン」といわれるフランチャイズですが、加盟をお勧めできない理由は上記述べた通りです。

当職は、加盟店側代理人としてフランチャイズ加盟者の相談を20年以上、相談だけの方を含めて少なくとも数百名の方から受けてきましたが、契約「前」に相談された方は記憶のある限りわずか2名のみです。大半の方は、契約し、加盟金を支払い、経営を開始してようやく「話が違う。騙された。」と思うのです。

フランチャイズ加盟が正しい選択なのかよくよく考えてほしいと思います。また周囲にフランチャイズ加盟を考えている方がいたら、本サイトを紹介して頂ければ幸いです。

余談になりますが、昨年、あるフランチャイズフェアを開催している会社の社員から講演依頼のメールがありました。フィーはこれこれ、内容はこれこれ、それで良かったらさせてやってもよい位の「上から目線」の内容でした。おそらくは当職の前著の題名だけ見て(読んでいれば分かる)、本部側の弁護士だと勘違いしたのだと思います。当職は、私の立位置を知っているのか、それでもよければ受けると回答したところ、「上司と相談する」と回答があり、その後、結局お断りのメールが来ました。一貫して実に失礼な対応でしたが、「言いたいことを全て言っていいという条件ならフィーは要らないからいつでも呼んで欲しい」と送りました。今でもそう思っていますのでいつでも呼んでください。講演の題名はもう決めてあります。「フランチャイズ加盟なんかやめておけ」です。

2021年08月04日