未成年者の意思表示と取消 2

経済産業省は「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」を改訂し、平成28年6月3日に公表している。

未成年者取消に関する記載についても改訂されている(51頁)。
「(3)未成年者が詐術による申込みを行った場合(民法第21条)」
「事業者が申込みの受付の際に画面上で年齢確認のための措置をとっているときに、未成年者が故意に虚偽の年齢を通知し、その結果、事業者が相手方を成年者と誤って判断した場合には、未成年者が「詐術を用いた」ものとして、民法第21条により、当該未成年者は取消権を失う可能性がある。
「詐術を用いた」ものに当たるかは、未成年者の年齢、商品・役務が未成年者が取引に入ることが想定されるような性質のものか否か(未成年者を対象にしていたり訴求力があるものか、特に未成年者を取引に誘引するような勧誘・広告がなされているか等も含む)及びこれらの事情に対応して事業者が設定する未成年者か否かの確認のための画面上の表示が未成年者に対する警告の意味を認識させるに足りる内容の表示であるか、未成年者が取引に入る可能性の程度等に応じて不実の入力により取引することを困難にする年齢確認の仕組みとなっているか等、個別具体的な事情を総合考慮した上で実質的な観点から判断されるものと解される。
すなわち、「未成年者の場合は親権者の同意が必要である」旨を申込み画面上で明確に表示・警告した上で、申込者に生年月日等未成年者か否かを判断する項目の入力を求めているにもかかわらず未成年者が虚偽の生年月日等を入力したという事実だけでなく、さらに未成年者の意図的な虚偽の入力が「人を欺くに足りる」行為といえるのかについて他の事情も含めた総合判断を要すると解される。」とあり、「(取り消すことができる(詐術に当たらない)と解される例)」として
・単に「成年ですか」との問いに「はい」のボタンをクリックさせる場合
・利用規約の一部に「未成年者の場合は法定代理人の同意が必要です」と記載してあるのみである場合
が挙げられている。
 単なるワンクリック程度では詐術には該当しないということが従前の記載よりも明確になっており、詐術に関する判例や通説からしても、準則の改訂内容は適当と考えられる。


2016年07月03日