未成年者取消と成年年齢引き下げ問題

平成27年6月17日公職選挙法改正により、衆議院議員、参議院議員、地方公共団体の議員及び長の選挙権は「年齢満18年以上」とされ、「満20年」から引き下げられた。これにより、満18歳をもって成人とすべきという議論が進められ、民法、少年法その他の関係法律で「10歳以上」となっている年齢条項を包括的に見直す動きとなっている。

消費者問題を取り扱う弁護士としては、民法の成年年齢を引き下げて、18歳や19歳の者が未成年者取消を使えなくなり、保護の対象から外すという結論は早計なのではないかと考える。

全国の消費生活センターに寄せられた消費生活相談の件数において、18~19歳の相談件数と20~22歳の相談件数を比較すると、後者は前者の1.4倍から1.9倍となっており、明らかな傾向の相違がある。とりわけ、マルチ取引の平均相談件数は、後者は前者の12.3倍にもなっている。こうした商法は、まさに未成年者取消を使えないが(未成熟で騙しやすい)新成人をターゲットとして狙い撃ちしていると想定される。

筆者の相談経験に照らしても、大学生は、各種商法(マルチ商法、タレント商法等)のターゲットにされているという実感がある。大学1年、2年生の内は、現実の社会を見聞しつつも、何か詐欺的な被害に遭ったときに、未成年者取消という強力を保護手段をとり得ることに当面はしておくのが妥当ではないか。

当事者たる18歳、19歳の若者も、民法上の成年となることを望まない方が過半数という調査結果もあるようであり、慎重に議論すべきだろう。

 

2016年07月05日