特定商取引法改正 指定権制の見直し

特定商取引法は消費者契約法と同時に平成28年5月に改正法が可決され、平成28年6月3日に公布された。施行日は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲において政令で定める日とされている。

指定権制の見直しがなされた。

従前、特商法上の「役務提供」と「権利の販売」については、役務の提供を行なう者が契約当事者となる場合(二者間契約)を「役務の提供」とし、役務の提供を行なう者以外の第三者が役務提供を受ける地位を販売する場合(三者間契約)には「権利の販売」として理解されていた。

そして「権利の販売」については指定権利制が取られ、「指定権利」とは「施設を利用し又は役務の提供を受ける権利のうち国民の日常生活に係る取引において販売されるものであって政令で定めるものをいう」(法2条4項)とされ、政令3条・別表第1において
① 保養のための施設又はスポーツ施設を利用する権利
② 映画、演劇、音楽、スポーツ、写真又は絵画、彫刻その他の美術工芸品を鑑賞し、又は観覧する権利
③ 語学の教授を受ける権利

と定義されていた。しかし、従来の指定権利制ではそもそも「権利の販売」に該当しそうであるが「指定権利」ではない商品、すなわちCO2排出権の売買、社債や未公開株の投資商品といったものの被害事例が生まれ、特商法の規制の網を掛けられないのではないかという問題が指摘されていた。
今回の平成28年改正では、指定権利制を見直し、「特定権利制」を導入した。

(改正法2条4項)
4  この章並びに第五十八条の十九及び第六十七条第一項において「特定権利」とは、次に掲げる権利をいう。
一 施設を利用し又は役務の提供を受ける権利のうち国民の日常生活に係る取引において販売されるものであつて政令で定めるもの
二 社債その他の金銭債権
三 株式会社の株式、合同会社、合名会社若しくは合資会社の社員の持分若しくはその他の社団法人の社員権又は外国法人の社員権でこれらの権利の性質を有するもの

従前の指定権利であったものは改正法の特定権利の1号に該当することになる。これに加えて、「役務」の解釈を見直し、仮に事業者が権利の販売であると主張しても、取引の実態が労務または便益の提供を内容としていると考えられるものは「役務の提供」として規制の対象とすることなった。

2016年07月20日